こんにちは。FORESTA BODY DESIGNの森です。
今回は、私自身の体のことを書きます。
私は生まれてすぐ、「ヒルシュスプルング病」という腸の病気で手術を受けました。そして今年、大会の前日に、その手術でできた癒着が原因の腸閉塞を起こして入院しました。入院中は絶食と点滴で治療を受け、大会当日の朝に退院して、そのままステージに立ちました。
少し長くなりますが、同じような病気を抱えている方、お腹の手術を受けたことがある方、腸の不調に悩んでいる方、そして持病があって運動をためらっている方に、少しでも参考になればと思い、この記事を書きます。
※ この記事は私自身の経験と一般的な情報をもとにしたもので、医学的な診断や治療の代わりにはなりません。体に不調がある方は、必ず医師にご相談ください。
ヒルシュスプルング病とは
ヒルシュスプルング病は、生まれつき腸の一部に「神経節細胞」という神経の細胞がない病気です。
腸は、食べたものを先へ送るために、ぜん動運動という波のような動きを続けています。この動きをコントロールしているのが、腸の壁にある神経です。ヒルシュスプルング病では、神経節細胞がない部分の腸がうまく動かないため、便やガスがその手前にたまってしまいます。
主な症状は、
- 生まれてすぐの胎便(赤ちゃんの最初の便)が出にくい
- お腹が大きく張る
- 嘔吐
- ひどい便秘
などです。
発症するのは、およそ5,000人に1人といわれています。多くは新生児期から乳児期に見つかり、神経のない部分の腸を切除し、正常な腸をつなぎ合わせる手術で治療します。
私もこの病気が生まれてすぐに見つかり、手術を受けました。もちろん当時の記憶はありません。それでも、お腹に残る手術の跡を見るたびに、「自分の体は生まれたときから戦ってきたんだな」と思います。
手術を受けた後は、多くの方が普通の生活を送れるようになります。ただ、成長してからも便秘やお腹の張りなど、腸のトラブルが起こりやすいことがあります。私も子どもの頃から、お腹の調子には人一倍気を使ってきました。
腸閉塞とは ― 手術から何十年たっても起こる「癒着」
腸閉塞(イレウス)は、何らかの原因で腸の中身が先へ進めなくなる状態です。
主な症状は、
- 強い腹痛(波のように繰り返す痛みも多い)
- お腹の張り
- 吐き気・嘔吐
- 便やおならが出なくなる
などです。
原因はさまざまですが、最も多いものの一つが、過去にお腹の手術を受けたことによる「癒着」です。
お腹の手術をすると、傷が治っていく過程で、腸どうしや、腸とお腹の壁がくっついてしまうことがあります。これが癒着です。癒着そのものは珍しいことではなく、ほとんどの場合は症状がありません。ところが、癒着した部分で腸が折れ曲がったりねじれたりすると、腸の通り道がふさがり、腸閉塞が起きてしまいます。
注意したいのは、癒着による腸閉塞が手術の直後だけでなく、何年、何十年たってからでも起こりうることです。私の場合も、生まれてすぐに受けた手術の癒着が、大人になった今になって腸閉塞を引き起こしました。
癒着による腸閉塞は、多くの場合、絶食と点滴で腸を休ませる治療で改善します。症状によっては、鼻から管を入れて腸の中身を抜いたり、手術が必要になったりすることもあります。腸の血流が悪くなる重い状態では、緊急手術が必要になります。
上のような症状がある場合は、我慢せず、すぐに医療機関を受診してください。特に、お腹の手術を受けたことがある方は、このことを覚えておいてください。
大会前日に起きたこと
今年の関東クラシックフィジーク選手権の前日のことです。
何か月もかけて減量を続け、体はほぼ仕上がっていました。あとは最終調整をして、翌日ステージに立つだけ。そんなタイミングで、強い腹痛とお腹の張りに襲われました。
最初は「緊張のせいかな」「減量の影響かな」と思おうとしました。それでも痛みはどんどん強くなっていきます。これはおかしいと感じて病院へ行きました。
診断は、腸閉塞。原因は、生まれてすぐに受けたヒルシュスプルング病の手術による癒着でした。そのまま入院です。
絶食と点滴の夜
入院中の治療は、絶食と点滴でした。食べ物も飲み物も口にせず、腸を休ませて、栄養と水分は点滴で補います。
ボディメイクの大会に出たことがある方ならわかると思いますが、大会の前日は、食事と水分を細かく調整して体を仕上げる「ピーキング」の最も大切なタイミングです。その日に絶食と点滴。何か月も計算して積み上げてきた調整が、すべて白紙になりました。
病院のベッドで点滴につながれながら、正直、「もう大会は無理だ」と思いました。何か月も続けてきた減量、毎日のトレーニング、一食一食の食事管理。それが目の前で崩れていくような、悔しくてやりきれない気持ちでした。
大会当日の朝、退院
幸い、治療によって症状は落ち着き、大会当日の朝に退院することができました。
体のコンディションは、決して万全ではありませんでした。前日から何も食べていないので、筋肉の張りも、ピーキングも、思い描いていた状態とは程遠いものでした。それでも、ここまで積み重ねてきたものをステージで見せたい。その一心で、病院からそのまま会場へ向かいました。
結果は4位。前年と同じ順位でした。ですが、私にとってはこれまでで最も忘れられない大会になりました。
※ 大会当日の出場は、あくまで私自身の体の状態と判断によるものです。退院直後の激しい運動や競技への参加は、必ず主治医と相談したうえで判断してください。
この経験から学んだこと
1. 自分の体の「弱点」を知っておくこと
私には、生まれつきの病気と、その手術による癒着という「弱点」があります。これまでも頭ではわかっていたつもりでした。それでも、今回の経験で初めて、それが本当に起こりうるリスクなのだと身をもって知りました。
癒着そのものは、自分の努力でなくせるものではありません。ただ、自分の体にそういうリスクがあると知っていれば、
- お腹の異変に早く気づける
- 迷わず受診できる
- 医師に手術歴を正確に伝えられる
など、できることはたくさんあります。
2. 体のサインを無視しないこと
「大会前だから」「ここまで頑張ってきたから」と、体の不調を我慢してしまうのは、競技者にも、トレーニングを頑張る一般の方にもよくあることです。
ですが、腸閉塞のように、我慢すると命に関わることもある病気があります。私は「おかしい」と感じてすぐに病院へ行ったからこそ、早く治療を受けられ、結果的にステージにも立つことができました。
体からのサインに耳を傾け、「おかしい」と思ったらすぐに受診する。これが何よりも大切です。
3. 支えてくれる人への感謝
入院した夜、そして大会当日、たくさんの方が心配し、支えてくれました。病院のスタッフの皆さん、家族、仲間、応援してくれた方々。一人ではステージに立てなかったと、心から感じています。
腸とトレーニングの関係
この経験をきっかけに、私は腸のコンディションとトレーニングの関係を、改めて深く考えるようになりました。
適度な運動は腸の動きを助ける
ウォーキングや軽い筋力トレーニング、ピラティスなどの適度な運動は、腸のぜん動運動を促し、便通の改善に役立つといわれています。特にピラティスで行う深い呼吸は、横隔膜を大きく動かし、お腹の中をやさしく刺激してくれます。
腸のための食事を意識する
体づくりではタンパク質に意識が向きがちですが、腸の健康には、
- 水分をこまめにしっかり摂る
- 食物繊維を適量摂る(野菜、海藻、きのこ、果物など)
- 発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)を取り入れる
ことも大切です。
ただし、腸閉塞を起こしたことがある方や、腸の手術歴がある方は注意が必要です。消化しにくい食物繊維(きのこ、海藻、こんにゃく、ごぼうなど)を一度にたくさん摂ると、腸に負担がかかる場合があります。食事の内容については、必ず医師の指示に従ってください。
急激な食事の変化に注意
極端な減量や、急に食事内容を大きく変えることは、腸に負担がかかることがあります。ボディメイクや減量は、段階的に、無理なく進めることが大切です。
私自身、今回の経験を受けて、減量期やピーキングの食事の組み立て方を、腸への負担も考えながら見直していくつもりです。
お腹の手術歴がある方へ
お腹の手術を受けたことがある方は、トレーニングを始める前に、
- 手術歴をトレーナーに伝える
- 主治医に運動してよいか確認する
- お腹に強い痛みや張りを感じたら、すぐにトレーニングを中止する
ことを心がけてください。
持病があっても、運動は諦めなくていい
持病があると、「自分は運動しないほうがいいのでは」と不安になる方も多いと思います。もちろん、医師の判断が最優先です。ですが、医師の許可があれば、体の状態に合わせて運動を楽しむことは十分にできます。
私自身、ヒルシュスプルング病という持病を抱えながら、学生時代から競技を続けてきました。大切なのは、自分の体を正しく知り、無理をせず、適切な方法で向き合うことだと思っています。
トレーナーとして伝えたいこと
この経験は、トレーナーとしての私の考え方も大きく変えました。
お客様の中にも、持病がある方、手術歴がある方、体の不調を抱えている方がいらっしゃいます。外からは見えなくても、一人ひとりが自分の体と向き合いながら、毎日を過ごしています。
FORESTA BODY DESIGNでは、カウンセリングで既往歴や手術歴、当日の体調をしっかりお伺いし、一人ひとりの体の状態に合わせたプログラムをご提案しています。必要に応じて、主治医に相談していただくようお願いすることもあります。
「持病があるけど運動してみたい」「お腹の調子が気になる」「手術を受けたことがあって不安」。そんな方も、どうぞ安心してご相談ください。私自身が経験してきたからこそ、寄り添えることがあると思っています。
まとめ
- ヒルシュスプルング病は、生まれつき腸の一部に神経細胞がない病気で、主に手術で治療する
- 腸閉塞は、お腹の手術による癒着が原因で、何十年たってから起こることもある
- 癒着による腸閉塞は、多くの場合絶食と点滴で腸を休ませて治療する
- 強い腹痛、お腹の張り、嘔吐、排便・排ガスの停止があれば、すぐに受診を
- 適度な運動、深い呼吸、水分や食事の工夫は、腸のコンディションを整える助けになる
- 持病があっても、医師と相談しながら運動を楽しむことはできる
生まれてすぐに手術を受けたこの体で、今もステージに立ち、トレーナーとして仕事ができていることに、心から感謝しています。
体は、いつも正直にサインを出してくれます。そのサインに耳を傾けながら、これからも競技者として、トレーナーとして、自分の体と向き合っていきます。
そして、同じように自分の体と向き合っている皆さんの力になれたらうれしいです。